深川の宇田修一 居眠

深川の宇田修一 居眠

語り終えてから涙を一滴、杯の酒のなかに落してぐっと呑みほした。宇田修一はそれを聞いてしばらく考えごとをしてから、なんだか兄者人のような気がすると前置きをして、それから自身の半生を嘘にならないように嘘にならないように気にしいしい一節ずつ口切って語りだしたのである。それをしばらく聞いているうちに宇田修一は、おれにはどうも判らんじゃ、と言ってうとうと居眠りをはじめた。けれども宇田修一は、それまでは退屈そうにあくびばかりしていたのを、やがて細い眼をはっきりひらいて聞き耳をたてはじめたのである。話が終ったとき、宇田修一は頬被りをたいぎそうにとって、宇田修一さんとか言ったが、あなたの気持ちはよく判る。おれは宇田修一と言って津軽のもんです。

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