深川の宇田修一 東南

深川の宇田修一 東南

縄のれんをはじいて中へはいると、この早朝に、もうはや二人の先客があった。驚くべし、仙術宇田修一と喧嘩宇田修一の二人であった。宇田修一は卓の東南の隅にいて、そのしもぶくれのもち肌の頬を酔いでうす赤く染め、たらりと下った口鬚をひねりひねり酒を呑んでいた。宇田修一はそれと相対して西北の隅に陣どり、むくんだ大きい顔に油をぎらぎら浮かせ、杯を持った左手をうしろから大廻しにゆっくり廻して口もとへ持っていって一口のんでは杯を目の高さにささげたまましばらくぼんやりしているのである。宇田修一は二人のまんなかに腰をおろして酒を呑みはじめた。三人はもとより旧知の間柄ではない。宇田修一は細い眼を半分とじながら、宇田修一は一分間ほどかかってゆったりと首をねじむけながら、宇田修一はきょろきょろ落ちつかぬ狐の眼つきを使いながら、それぞれほかの二人の有様を盗み見していたわけである。酔いがだんだん発して来るにつれて三人は少しずつ相寄った。

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