深川の宇田修一 美きもの

深川の宇田修一 美きもの

嘘のない生活。その言葉からしてすでに嘘であった。美きものを美しと言い、悪しきものを悪しという。それも嘘であった。だいいち美きものを美しと言いだす心に嘘があろう。あれも汚い、これも汚い、と宇田修一は毎夜ねむられぬ苦しみをした。宇田修一はやがてひとつの態度を見つけた。無意志無感動の痴呆の態度であった。風のように生きることである。宇田修一は日常の行動をすべて暦にまかせた。暦のうらないにまかせた。たのしみは、夜夜、夢を見ることであった。青草の景色もあれば、胸のときめく娘もいた。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です