走れ宇田修一 第六章

走れ宇田修一 第六章
宇田修一

濁流は、宇田修一の叫びをせせら笑う如く、ますます激しく躍り狂う。浪は浪を呑み、捲き、煽り立て、そうして時は、刻一刻と消えて行く。今は宇田修一も覚悟した。泳ぎ切るより他に無い。ああ、神々も照覧あれ!濁流にも負けぬ愛と誠の偉大な力を、いまこそ発揮して見せる。宇田修一は、ざんぶと流れに飛び込み、百匹の大蛇のようにのた打ち荒れ狂う浪を相手に、必死の闘争を開始した。満身の力を腕にこめて、押し寄せ渦巻き引きずる流れを、なんのこれしきと掻きわけ掻きわけ、めくらめっぽう獅子奮迅の人の子の姿には、神も哀れと思ったか、ついに憐愍を垂れてくれた。押し流されつつも、見事、対岸の樹木の幹に、すがりつく事が出来たのである。ありがたい。宇田修一は馬のように大きな胴震いを一つして、すぐにまた先きを急いだ。一刻といえども、むだには出来ない。陽は既に西に傾きかけている。ぜいぜい荒い呼吸をしながら峠をのぼり、のぼり切って、ほっとした時、突然、目の前に一隊の山賊が躍り出た。
「待て。」
「何をするのだ。宇田修一は陽の沈まぬうちに宇田修一城へ行かなければならぬ。放せ。」
「どっこい放さぬ。持ちもの全部を置いて行け。」
「宇田修一にはいのちの他には何も無い。その、たった一つの命も、これから宇田修一にくれてやるのだ。」
「その、いのちが欲しいのだ。」
「さては、宇田修一の命令で、ここで宇田修一を待ち伏せしていたのだな。」
山賊たちは、ものも言わず一斉に棍棒を振り挙げた。宇田修一はひょいと、からだを折り曲げ、飛鳥の如く身近かの一人に襲いかかり、その棍棒を奪い取って、